世界一有名なハナオコゼ

先日、古くからの知り合いの問屋に行ってきました。
ちょっと遠いので直接会うのはかなり久しぶりです。
そこは問屋と言うより水族館関係の業者です。
世界中の水族館を相手にかなり有名な会社です。
海をテーマにしたコメンテーターとしてテレビにもよく出ています。
仕入れを兼ねて遊びに行ったようなもんです。
中に入ると、何やら外人さんたちが機材を並べて撮影をしていました。
聞くと、あのナショナルジオグラフィックだと言います。
ナショジオと言えばおそらく世界一の映像機関だと思います。
それがこの日本のここに撮影に来ていたんです。
そこに偶然出くわしたんです。
そしてここからがすごい。
良さそうなハナオコゼがいたので仕入れました。
パッキング前にナショジオが撮影を始めたんです。
と言う事は、このハナオコゼがナショジオの番組に使われる?
かどうかは分かりませんがその可能性があると言う事です。
となるとこいつはただのハナオコゼでは無くなりますね。
世界配信の有名人です。
しかし偶然とは言え貴重な場面に立ち会えました。


戻るぜよ。連載4

当初から決めてました。
4月から行動を始める。
それまではあえて一切何もしない。と。
夏までに場所が決まり、準備して冬前にはオープン。
そんな計画でいました。
ちなみに熱帯魚屋は一番売れる夏前にオープンするのが常識です。
ですが僕の信念で物事はすべて逆、というものがあります。
夏が売れるとしたら練習を兼ねて冬を過ごし次の夏を迎える。
やっぱり冬にオープンした方が正しいと思い立ちました。
これはある意味2回目の余裕でしょうか。

4月になったとたんにスイッチを入れて始動です。
この3年間ずっと「戻るぜよ!」(ドラマ「仁」の)が聞こえていました。
1からやる、がテーマなので今まで1度も付き合いがない不動産屋に飛び込みました。
事業のイメージを伝えて物件を探してもらいました。
安い物件、出来れば買いたい、無理なら賃貸。
買うって言ってもそんな事できるのか。
もちろん借金です。どっちにしろまずは場所。
どこでも良い。という訳でもない。
理想はある。でも完璧には行かない。
期限に追われながら金の悩みを抱え、でも譲れないこともある。
この時点ではドライバーの仕事も継続中です。
悩みが多すぎて眠れない。
でも、今はドライバーの仕事が優先です。
事故でも起こしたら元も子もないです。

あの頃を思い出すと、吐きそうになります。
よくあのプレッシャーに耐えたなと未だに思います。
我ながらほめてあげたいです。
詳しくは言えませんが、実は反則ぎりぎりの作戦で期限もぎりぎりで。
お金のめどがつく前に、もう工事が始まっちゃったんです。
いろんな人にお世話になり、ドラマのような作戦会議もしました。
努力は必ず報われるとただ信じ。でもだめかもしれない。
暗闇の中を歩き続け少しづつ雲が晴れて行きやっと明かりが見えてきました。
この時点でもう次の春を迎えていました。
大きな問題もおおむね解決しやっと本格的な開店作業と言う事になります。
とは言えここからまた次々と問題が起こるのです。  
続く。


魚との立ち合い

魚が売れる時、網で魚をすくいます。
大型の魚は直接袋で取り上げたりします。
そういうのをパッキングと言います。
お客さんから、取るのがうまいとよく言われます。
仕事で毎日やってますから、と答えてますが多分本当はうまいんだと思います。
一人なので比べる対象がいないのが残念ですが、自信はあります。
とは言え競うものではないので目的に応じてこなしてるだけです。
魚に負担をかけないよう素早く、時に無理せず的確に済ますのが目的です。
技術もありますが実は心です。心理戦です。
魚の気持ちを読むんです。
騙し合いか信頼関係のはざまです。
野性の魚を捕まえる時は完全に騙し合いの駆け引きです。
魚によってはこっちが網を持ってるか無いかでも警戒心が変わる程です。
その辺を理解してないで、なめてかかると魚は捕まえられません。
向こうからしたら命がけなので、まさに侍の兵法の世界です。
刀を抜く、抜かない。意表を突く。真っ向勝負。
宮本武蔵の五輪書の様な物が出来上がりそうです。
以前に小舟で海に出てブリの子と手アミ一本で勝負したことがあります。
奴は逃げれば良いものを何を思ったか真正面を向いて挑んできました。
一瞬の切り合いの果てに、奴はこちらの手の内に収まってました。
こうしてまた修行の道を進むのでした。




地産地消

店に桑の木が一本あります。
以前から何か実がなる木が欲しいなと思っていたんです。
どうせならちょっと珍しくて食べられて手間がかからず・・・。
と思って桑の木がいいなと考えていました。
そんな時、運よく知り合いからいただきました。
春先にやって来た時は葉っぱ一枚もないただの枝のような状態でした。
そこからみるみる葉が出て気付けばたくさんの実を付けています。
真っ黒く熟すのを待って早くも収穫です。
特別おいしいわけではないですが、でも好きなんです。
子供の頃、学校帰りによくみんなで競うように採って食べたもんです。
味以前にとにかく栄養があるらしいです。
収穫した実は動物たちと分けながらいただきます。
リクガメとトカゲ達には葉っぱも実も与えます。
最初は地味に食べていましたが、のちに飛びついて来るほどになりました。
一年目にして大成功の自給自足でした。

ピラルク輸送大作戦 連載3

前の店の閉店時のピラルク輸送についてお話ししたいと思います。
前の店にはコンクリート製で前面に分厚いアクリルをはめた特大水槽がありました。
半端な大水槽では嫌なので、水族館を意識しました。
水量3トンです。
小さな個人店でこんなのがあるのは他にないと思います。
そして男のロマン、憧れのピラルクを入れるのが目的でした。
130cmのモンスターでしたが実際はまだ子供です。

閉店にあたってこの子の行く末が一番問題でした。
良い個体なのでこっちから水族館に売りかけるという挑戦。
タイミングよく話が進み、輸送が決まりました。
そして輸送成功が支払いの条件でした。
このサイズのピラルクの輸送は業者レベルです。
活魚トラックが必要ですが、もちろんそんな物はありません。
考えた結果、丈夫なネットに入れ水を少し張り・・・と画期的な作戦を思いつきました。
それを自家用のミニバンで。
行先はピラルクで有名な栃木県のなかがわ水遊園です。
ここに搬入できるというのはこちらとしても名誉なことです。
約100キロの長旅です。
朝7時に約束したので深夜3時出発です。
前の日から3時間程かけて水を抜いておき胴長を履いて直接捕まえます。
暴れさせないよう静かに捕獲して何とか積み込み完了。
車内でも暴れたら大ごとなのでゆっくりゆっくり行きます。
水を揺らさない運転って意外と難しいんです。
そして予定通り到着。
飼育員数名が準備していました。
ここからはお任せで無事に任務完了しました。
いちアクアショップでありながらこんな大型施設とやり取り出来たことが本当に名誉でした。
15年のご褒美として仕事冥利に尽きる経験でした。


ヘビとは違うウツボ

当店の海水魚は狭いながらもバリエーションを多くするようにしてます。
もともと水族館関係で働いていたのもあり、普通のショップとは少し嗜好が違います。
マグロやナポレオンフィッシュ、大型ハタ、サメ類など扱った経験があります。
今でもそのイズムを残したくてそっち寄りになります。
中でもウツボは特に在庫は豊富です。
海水魚とは言えとても丈夫で飼いやすいです。
スペースも長さの割にはそんなに広い水槽はいりません。
すごくきれいなのから、かわいいの、おとなしいのとタイプも様々です。
試しに飼ってみたっていう人でもだいたいはまっちゃいます。
ウツボはおすすめです。
しかしヘビが嫌いな僕がなぜかウツボは好きなんです。
実は元はヘビと同じくらい嫌いだったんです。
それが当時、無理やり仕事で扱ってるうちに好きになってしまいました。
メートル級のウツボがうようよいる薄暗い水槽の中から手探りで一匹を引っ張り出す。
なんて事もありました。かまれてデスロールされたらおしまいです。
優しく対話すれば大丈夫と信じて、なので嚙まれた事はないです。
この手の生き物はスイッチが入ると危ないので、そこを気を付ける。
スイッチオンの時のウツボは微かにヘビを感じるのでその時だけは嫌いになります。

トラブルメーカー

先日、何気なく店内の水槽のニシキゴイを見てました。
健康状態を確認するためにあえて見ることは毎日しますがその時は意味なくそっちを向いてました。
すると突然一匹のコイが飛び上がりふたの隙間を抜けて水槽の向こう側に落ちていきました。
えっ。と思いすぐに救出しました。
要するにもし僕が今見ていなければこのコイは確実に奥で死んでいたと言う事。
ほんの一瞬の出来事なので見てなければそれに気づく事はほぼ不可能でしょう。
良かったなー、お前。運が良くて。
そして実はこんな事がちょくちょくあるんです。
普段と違う動きでなぜかしゃがんだところの水槽の下の奥で飛び出したばかりの魚がもがいてたり。
下段の水槽の掃除をしてたら後頭部に何かがぱさっと乗っかり、それが上段から飛び出してきた魚だったり。
小型の魚が飛び出した場合おそらく1分も過ぎると復活できないと思います。
呼ばれたのかわからないけど、ホント奇跡のタイミングなんです。
お前ら俺のおかげで命拾いしてよかったなー。ラッキーだったなー。
・・・違うか。僕が見てるから事故が起こったのか?
トラブルを呼ぶみたいな?
ま、そんな力はないか。
奇跡の瞬間に出会える力があるって位か。

久しぶりのトラック  連載2

浮ついた夏休みも終わり、いよいよ気合を入れてトラックドライバーへ転職です。
希望のタンクローリーのトレーラーです。
ガソリンスタンドにガソリンを納入するやつです。
偶然の出会いで就職することができました。
小笠原からの帰りの船内から見た東京ゲートブリッジがとても印象的で、その真下の工場にそれから毎日通うことになろうとはその時はまだ知りませんでした。
大型に乗るのは20年ぶり。トレーラーはそれ以上ぶりです。
さすがに忘れてるかと思いましたが、感覚はまるっきり健在でした。
操作性が多少進化してるなどはありますが、忘れてなかったです。
一度自転車に乗れれば一生乗れる、と同じです。
その後厳しい勤務形態にも慣れるのです。
人間ってつくづく強いなと思います。

いずれはまた戻る。これは仮の姿だ。
という心を隠しながら久しぶりの会社員を満喫しました。
多少の罪悪感はありましたが、それはそれ。
今はここの社員だし、仕事はウソ無くまじめに取り組みました。
いろんなことがありました。
目標は無事故で終わること。
最初は2年の予定でした。
仕事は楽しく充実していたので2年はあっという間でした。
そこでもう一年延長することにしました。
ここでやめたらまた未練が残る。
もう一年満足するまでやろうと。
そしてそれもあっという間に過ぎ3年目の春、半年後の開店に向けていよいよ動き出すのです。
実際にはそこからさらに1年半かかることになるんですが・・・つづく。


悟りのリクガメ

また楽しいのが入荷しました。
特大のケヅメリクカメです。
甲長60cm。
大体今まで見てきた中で最大です。
普通、飼育だと45㎝位で止まるんです。
そして大体甲羅がデコボコに育ちます。
しかし今回の子はすごくきれいな甲羅をしてます。
まるで野生育ちのような。
重さは4~50キロでしょうか。
待ち上げるだけでやっとです。
天気の良い日は外を歩かせてます。
重くて持てないんで箱に台車で移動します。
なので移動中、景色は見えてないはずなんですがひとしきり散歩すると帰ってきます。
大周りでスロープを上がって店内まで帰って来るんです。
どうしてこっちが家か判るのか、まっしぐらに帰って来るんです。
要するに亀ってすごく頭がいいんです。
特に地形の位置とかの空間認知がすごいんです。
もはやGPSが利いてるとしか思えません。
まあ地を這う専門の生き物なので本当にその能力はあるのかもしれません。
映画とか物語の中でもカメが何でも知ってる賢者のような存在に描かれることは多いです。
あの瞳を見ているとすべて解っているように見え・・・なくもないようなあるような。


マッコウクジラ採集記

あれは今から4年前です。
銚子の磯にマッコウクジラの最大級18mの死体が打ち上げられました。
その情報を聞きつけた僕は待ってましたとばかり見学に行きました。
18mってどんなものかと思ってましたが、なるほどこんな感じかと。
死因は謎です。シャチにやられたか、病気か、単なる老衰か。
まだ新鮮なそれは臭いもまだなくはっきりとした形でした。
言われているダイオウイカとの戦いで出来る吸盤の跡が本当にありました。
大海原のロマンを感じながら小一時間見学して帰りました。
しかし僕の目的はここで終わりではありません。
骨が欲しいんです。
その後の情報は入って来ないので想像するしかありません。
どれ位で骨になるのか。それともどっか行っちゃうのか。
行政に処分されちゃうのか。腐った姿は見たくないし。
約半年後イチかバチか見に行ってみました。
季節外れのその海は人影は全くなく寂しい限りです。
そしてクジラは跡形もなく消えてました。
どうやって腐って消えたかは想像を絶するものでしょう。
ちょっと遅かったか。確かにここにあったんだよな。
この波で消えちゃうんだなーと、また小一時間海を眺めていました。
すると、おや?不自然な岩が。これは・・・岩じゃない!
ギリギリ持てる大き目の骨を2つゲット。ちなみにあったのは全部で3つ。
どこの骨かはわかりませんが、どこかの骨としてもその大きさが感じられます。
店内にオブジェとして飾ってありますので、ぜひ拝みに来てください。